DH国際シンポジウム
DH International Symposium
東アジア/日本における人文学向けテキスト
データ構造化のためのガイドライン策定に向けて
DH International Symposium
東アジア/日本における人文学向けテキスト
データ構造化のためのガイドライン策定に向けて
日時: 9月13日(土曜) 13 September (Sat)
会場:慶應義塾大学三田キャンパス北館 Keio University Mita Campus
開催言語:日英(同時通訳有り)
開催形式:対面・一部オンライン配信あり
参加申し込みフォーム (参加費無料・要申込み)
開催趣旨
デジタル技術の特性を活かしたテキスト研究を可能とするための取り組みは、国際的には1980年代より進められてきており、日本でも近年より徐々に進みつつある。技術が進歩してデジタル化できる要素が増えるたびに、アナログの資料に立ち戻ってさらなるデジタル化とそこからの新しい展開を目指すというサイクルは国際的な枠組みのなかで幾度となく繰り返され、それに伴ってデジタルテキスト研究もまた少しずつ前に進んできた。この取り組みは、近年日本政府も含む国際的な学術研究の潮流としてのオープンサイエンスにおいて、人文学の存在を示すためには不可欠のものである。これを日本においても適切に実現するためのガイドライン策定の必要性が高まっており、昨年度より文部科学省の委託事業の一環として取組みが始まっている。
本シンポジウムでは、人文学のためのテキストデータ構造化に関する国際的なデファクト標準であるTEI Guidelinesを策定するTEI Consortiumにおいて長く重要な役割を果たしてきた James Cummings博士(ニューカッスル大学)を招聘し、東アジアテキスト文化圏の一部としての日本のテキスト構造化のあり方とそれを踏まえたガイドラインの策定について検討する。
基調講演
Dr. James Cummings
基調講演
Forging a Flexible Framework: how consensus, compromise, and customisation have built the TEI-C community /
柔軟な枠組みの構築: コンセンサス、妥協、そしてカスタマイズがTEI-Cコミュニティをどのように構築してきたか
概要
Text Encoding Initiativeコンソーシアム(TEI協会)は、さまざまなテキスト上の現象を構造化するための588以上の方法を記述した TEI: Guidelines for Electronic Text Encoding and Interchange(電子テキスト符号化および交換のためのガイドライン)を作成・維持しており、これは人文学研究におけるテキストデータ構造化に関する、事実上の自由利用可能でオープン編集・オープンライセンスの標準規格となっている。TEI協会の顕著かつ持続的な成功は、そのコミュニティ主導の開発プロセスに根本的な基盤を置いている。TEI協会は、多くの商業的寄付者や利害関係者を抱える裕福な標準化団体ではなく、代わりに、選挙で選ばれた有志が時間を割いて活動する国際的な非営利会員組織である。TEI協会は、機関、プロジェクト、個人に対して会員となり会費を納めることを奨励している。そして、この成功は、TEI技術委員会(TEIガイドラインと関連ソフトウェアの維持管理を監督)や、TEI協会理事会(組織の運営や年次TEI会議の開催などを担う)で活動するコミュニティおよび選出されたボランティアなしには実現不可能である。
過去20年間にわたり、TEI協会の技術委員会および理事会の双方で選出メンバーとして活動してきた経験を振り返りながら、James Cummings氏は、TEIガイドラインの策定が、非常に多様なニーズや異なる期待を持つ人々を結びつけ、活発なコミュニティとして協働する場を創り出してきたことを考察する。彼が関わってきた研究プロジェクトのいくつかの事例をもとに、Cummings氏 は、ほぼ40年にわたるTEIガイドラインの発展が、合意形成の基盤、妥協の受け入れ、多様性の認識、そして共通点への注目によって支えられてきたと論じる。そうであるがゆえに、TEIガイドラインの開発そのものが、過去40年間にわたるテキスト構造化コミュニティの関心や分野の発展の記録として機能している。
Cummings氏は、ある課題が最終的にTEIガイドラインに採用されるまでに、コミュニティとTEI技術委員会の双方によってどのように議論され、洗練されてきたかの事例をいくつか取り上げて紹介する。また、どのようなコミュニティでも、TEIガイドラインへの追加修正を提案することが可能であり、それを成功させるためのヒントやコツについても解説する。最後に、Cummings氏は、TEIフレームワーク全体のカスタマイズの性質と、それを各コミュニティが自分たちのものとして活用する際の利点について、非常に一般的な観点から検討する予定である。
プログラム
午前の部@北館ホール
10:00~12:00
テキストデータ構築入門セミナー Introductory Seminar on Text Encoding
講師:永崎研宣、岡田一祐(慶應義塾大学文学部)
午後の部@北館ホール
13:30~14:00
1. 開催趣旨説明
永崎研宣 、岡田一祐(慶應義塾大学)、中川奈津子(九州大学)
Nagasaki, Kiyonori; Okada, Kazuhiro; Nakagawa, Natsuko
14:00~15:00
2. 基調講演「柔軟な枠組みの構築: コンセンサス、妥協、そしてカスタマイズがTEI-Cコミュニティをどのように構築してきたか」
James Cummings(ニューカッスル大学)
15:20~17:00
近年のテキスト構造化に関する取組みや研究の紹介
ライトニングトーク+ポスター発表 Poster presentations
3. 多層的注記を有する和歌集のTEI準拠校本の共創:最適なTEIモデリングをDHコミュニティと策定する
舟見一哉(実践女子大学・文学部国文学科)
4. 日本伝統音楽の教則本を対象とした混植資料の構造化
関慎太朗(理化学研究所)
6. テキスト符号化の授業実践報告
中川奈津子(九州大学大学院 人文科学研究院)
7. 「前近代日本ーアジア関係資料デジタルアーカイブ」が目指すもの
荒木和憲(九州大学大学院 人文科学研究院),詫間沙由香(九州大学附属図書館),
丹野美里(九州大学大学院 人文科学研究院),松川尊仁(株式会社ローカルメディアラボ),内田敦士(九州大学大学院 人文科学研究院),堀優子(九州大学附属図書館),山根泰志(九州大学附属図書館)
8. 年譜資料の構造化と可視化 ―森鷗外書入れ本「抽斎年譜」を例に―
若手図書館員DH勉強会
9. 勅撰和歌集の配列に着目した歌ことば・和歌表現のTEIマークアップ手法の検討―『玉葉和歌集』雑二部を対象として―
持田玲(日本女子大学 文学部 日本文学科 学術研究員/株式会社文学通信 編集部)
10. 木村蒹葭堂(1736~1802)関連資料のTEI化と近世日本の文人ネットワーク
鄭敬珍(茨城キリスト教大学)
11. TEIを用いた原本『玉篇』残巻における典拠情報の記述
李媛(京都大学人文科学研究所)
12. 「抄物」資料の構造化・コーパス化と展望
北﨑勇帆(大阪大学),村山実和子(日本女子大学)
13. 中世ヨーロッパの贖宥状テクストの構造化と数量的検討
纓田宗紀(東京大学特任研究員(学振RPD))
14. 中世王朝物語へのTEI適用の試み―『恋路ゆかしき大将』を例に―
横山恵理(大阪工業大学)
15. 形態素解析ツールを用いた前近代アラビア語人名録の語彙分析
太田(塚田)絵里奈(東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門)
16. TEIを用いた小説テキストにおける空間情報の構造化
浅間香織(東京大学大学院人文社会系研究科)
17. 画家の図像入り書簡のマークアップ過程で見えた課題と期待
越智公子(慶應義塾大学大学院・美学美術史学専攻)
18. 近世国学者による本居宣長『万葉集』注釈の書入と自説の付加――多層的注釈の構造化に向けて
阪口由佳(奈良女子大学)
19. TEIとRDFによる図書寮本『類聚名義抄』の出典情報記述の高度化について
申雄哲(国立ハンバッ大学)
20. ジャン=ジャック・ルソーの手稿生成過程のTEIによる構造化/Modeling the Genetic Process of Jean-Jacques Rousseau’s Manuscripts with TEI
飯田賢穂/IIDA Yoshiho(筑波大学 人文社会系)
21. 日本密教資料のTEI化とその可能性ーー同志社大学文化情報学部、デジタル・ヒストリー研究室の取り組み/Preliminary Experiments in TEI Encoding of Japanese Esoteric Buddhism Sources
Rappo Gaetan (同志社大学文化情報学部)
22. TEIを用いて渋沢栄一の言説と『論語と算盤』をつなぐ/Encoding the relationship between the edited work and Shibusawa Eiichi’s source materials with TEI
茂原暢/Shigehara, Toru (公益財団法人渋沢栄一記念財団 情報資源センター)
23. トマス・アクィナス『定期討論集 魂について』のTEI構造化に向けて(仮題)
小野智也(慶應義塾大学大学院文学研究科)
24. 琉球関係史料のテキスト構造化に向けた取組
冨田千夏/TOMITA, Chinatsu(琉球大学附属図書館)
25. TEIで諸本を繋ぐ:「デジタル源氏物語」の試み
裏源氏勉強会(東京大学附属図書館職員有志・教員によるデジタルアーカイブ活用に関する勉強会)
26. 教育学者・大田尭 研究資料デジタルアーカイブ構築ー手記・調査資料のTEI構造化に向けてー
原田真喜子/Makiko Harada(都留文科大学)
27. 『大蔵経』TEI化における脚注の符号化について
村瀬友洋(SAT大蔵経テキストデータベース研究会)
28. Humanities Data Lab. From text encoding to Linked Data: LINCS's TEI to RDF transformation workflows
Alice Defours(University of Ottawa)
29. TEI古典籍ビューワの近況
永崎研宣(慶應義塾大学/一般財団法人人文情報学研究所)
17:15~17:45
30. 総合ディスカッション
17:45~
31. クロージング
共催
TEI Consortium, East Asian/ Japanese Special Interest Group (TEI協会東アジア/日本語分科会)
科研費特別推進研究「デジタル研究基盤としての令和大蔵経の編纂―次世代人文学の研究基盤構築モデルの提示(JP25H00001)」
人文学・社会科学のDX化に向けた研究開発推進事業・研究基盤ハブ
後援(五十音順)
九州大学人文科学研究院
九州大学人文情報連携学府
慶應義塾大学文学部図書館・情報学専攻
東京大学大学院人文社会系研究科次世代人文学開発センター人文情報学部門
東京大学史料編纂所附属前近代日本史情報国際センター
名古屋大学人文学研究科
一般財団法人人文情報学研究所
科研費基盤研究(B)「人文学の研究方法論に基づく日本の歴史的テキストのためのデータ構造化手法の開発(23H03696)」